FOR NEXT CREATORS
機微を捉えた
色彩とコントラストで
幻想的な世界観へと誘う
gemi
ILLUSTRATOR
げみ
イラストレーター
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Twitter(@gemi333)で投稿した作品が話題となり、現在は書籍の装画を中心に活躍するイラストレーターのげみさん。1年間で手掛ける装画は数多く、新刊コーナーで見ない日がないほどです。幻想的な世界観が描かれた表紙を書店で目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。ご自身の画集や絵本も上梓されるなど、いまや押すに押されぬ人気作家となったげみさんに、イラストレーターになるまでの経緯や装画をするうえでのスタンスや技法などを語っていただきました。また、DAIVのためだけに新作を描いていただき、その工程をメイキングムービーでご紹介。まだ世に出ていない、げみさんの作品は必見です。
げみさんの過去作品。どこかノスタルジックで幻想的な世界観が特徴。
「割れてしまう前に」
「幻だったとして」
「黒い鳥」
「色の降る日」
作品制作メイキングムービー
自分の作品を世に出す意義が見つけられなかった
イラストレーションの仕事をするまでは、アートの勉強をして絵を描いていました。
アートには社会に対して新しい価値観を与えたり、なにかを気づかせてくれる力があります。そういった人の心を動かす影響力を持つ作品を作るためには、作家には強い信念が必要です。僕もそうなりたいと思ってやっていましたが、ふと「自分じゃなくていいんじゃないか」とか、「自分の絵は社会にとって、何か価値があるのだろうか」などと信念が揺らいでしまって。何のために絵を描いているのか、理由や意味がわからなくなってしまったんです。そんな時、京都のバンドmol-74の武市さんが僕の絵を観て、ぜひCDジャケットに絵を描いてほしいと依頼してくれました。
絵を描きたいという欲求はあるけれど、理由が無かった僕にとって、人から頼まれることではじめて、絵を描く価値を見つけられたんですね。
それをきっかけにイラストレーターの道を選びました。大学を卒業して2年目くらいの頃です。そこから自然と、依頼されるための絵はどんなものなのかを考えはじめました。
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どう描けば、求められるようになるのか
書籍の装画は、自身のキャリアビジョンとしてイラストレーターを目指した段階からありました。知り合いが書籍の表紙をやっていたり、好きなイラストレーターさんが装画を担当した本をたまたま買っていたりとか、そういうことが重なり合って自然と目標になっていたんです。
まず依頼されるために考えたのは、どうすれば編集者の方々に求められるのかということと、読者が手にとりやすい絵はどんな絵なのかということです。そこでまず自分の中の価値観と世の中の価値観のズレを補うためにpixivやTwitterでイラストをどんどん公開していきました。「自分はこれが好きだけど、世の中はそうでも無いんだな」という風に自分の作品を客観視したかったからです。
同時にこの位置に文字が載る、ここに帯が入るっていう、表紙のデザインを意識したイラストも量産していきました。そうしていたら幸運なことに、ある編集者さんからご依頼をいただけて。
さらに、自分の描いた絵が装画として書店に並ぶことで、今度は別の出版社や編集者の方々の目にも留まり、徐々に仕事が増えていったんです。
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舞台装置として機能する背景
琴線に触れるシーンとの出会いは一期一会。だからカメラは欠かせないツールです。旅行はもちろん、近所を散歩していても思わずシャッターを切ってしまう瞬間はあります。
以前撮った写真から、「このモチーフは、あの場所を背景にすればピッタリじゃん!」とインスピレーションが湧くことって結構あるんですよ。僕にとってイラストの背景は、例えるなら芝居の舞台装置。絵の主役を際立たせるための演出のつもりでいつも描いています。舞台装置となるアイディアは暮らしの様々な場面に転がっているので、尽きることはありませんね。
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自分の思考のスピードに応える、処理速度
装画の仕事をするにあたり、人物はもっとこっちに動かして欲しいとか、色をこういうトーンに変えてほしいっていう要望は、当然、後からどんどんいただきます。そういう時、すぐに形や色が変更できて、修正できるということが、パソコンで絵を描く一番の利点ですね。新しい色を加えて本当に問題ないか、数回前の色味と比べてどちらが良いかなど、自分の求めるビジョンへとスピーディに近づけることができます。だから最適解を瞬時に見極めるうえで、パソコンの処理速度は妥協できません。
容量が大きい絵やレイヤーをたくさん重ねた絵だと、ちょっと拡大したり保存したりするだけで、処理に時間がかかり、カーソルがくるくる回ってしまうことがあります。
今回、試用でお借りしたDAIVのパソコンはそれが全然なくて、作業効率がずいぶん上がりました。返却後、手元からなくなった時の喪失感が大きいです。
それと、本格的にイラストを描くならモニター選びも大事です。僕はカラーキャリブレーション機能がついていることと、印刷物となるべく同じ色が再現できることに重きをおいています。ただし職業柄、色にシビアなだけなので、趣味としてイラストを描く人は、処理速度の高いパソコンとペンタブさえ揃えれば十分ではないでしょうか。
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デジタルにアナログの質感を吹き込む
パソコンで絵を描くので、絵の具で表現できないことをしたいという思いは強いですね。
この「溶けゆく私」というイラストの波の部分ですが、実は自作のテクスチャーを使用しているんですよ。木製のパネルにアクリル絵の具を塗ってから、版画の要領で画用紙を押しつけて、その模様をスキャンしています。紙の上でランダムに広がる絵の具のにじみとかシミは、波や雲の動きの偶然性を表現するのに使い勝手の良い素材です。絵の具のシミを観る人に波だと感じさせる、そんなトリックは描き手としても楽しめるので、しょっちゅう使います。Twitterで海外の方から、「背景がフィルタリングされた写真だと思った。私はもっとよく見なければいけなかった。」っていう、リプライが飛んできた時は嬉しかったです。
自作のテクスチャー
「溶けゆく私」
感性の世界へ、「潜ったまま息をして」
今回、新たに描いたイラストで表現したかったのは、『飛び込め、感性の世界へ。』というDAIVのコンセプトメッセージ。主人公の女の子が飛び込んでいるのは、僕がイメージする感性の世界です。水中に見立てたその世界は、息苦しさから解放されたとても自由な空間。感性の世界では、水中であっても息を止めずに自由に泳げるのではと思い、「潜ったまま息をして」というタイトルをつけました。またぶくぶくと広がる泡は、雲のようにも見えるので、そこを滑空する紙飛行機を描いています。本来水中では、クシャクシャになってしまうはずの紙飛行機を飛ばすことで、幻想的な雰囲気に仕上げました。
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「潜ったまま息をして」
30代の課題は、10年飽きない絵を見つけること
来年30歳になるんですが、20代は定食屋をやっているイメージで仕事をしてきたと感じています。どんなお客さんも来てくれていいし、安くて早くておいしいご飯をイタリアンだろうが中華だろうが和食だろうが提供しますよっていうスタンスでやってきました。そっちの方がたくさんのお客さんに利用してもらえる分母が増えますし、足りなかった自分の表現の幅も広がるので、その考え方は間違っていなかったですね。けれどこの先は、和食を10年以上極めたいんだって思ったり、中華を10年以上極めたいなと思ったりすることも大事だと思っています。「あの人のところに行かないと食べられない」的なものを絵で表現していきたいですね。僕は、流行に関係なくそこにいるという存在にならないと、一人の作家として40代50代を迎えられないだろうなと考えています。そのために自分が10年以上描き続けられるテーマのようなものを見つける30代にしたいです。
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自分の絵を別のアプローチで見せてくれる人とコラボしたい
相乗効果を生み出せるような方とのコラボレーションみたいなこともやってみたいと思っています。僕の絵を斬新な見せ方で表現できるものであれば、非常に楽しいだろうなと。例えばVRで僕の描く世界観を具現化したり、2Dでも絵の質感のまま動かすとか。そういった技術を持った人とコラボできればいいなと考えています。誰かと一緒じゃないと作れないものにチャレンジしてみたいですね。
自分の想像を超えた、どうなるかわからないことの方がワクワクしますし、世界観が広がることで刺激にもなります。
今まで届かなかった人たちに観てもらうためにも、共同作業で作品をリリースするっていう経験をしてみたいですね。
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gemi
ILLUSTRATOR
1989年生まれ。兵庫県三田市出身。京都造形芸術大学美術工芸学科日本画コース卒業後、イラストレーターとして作家活動を開始。主に書籍の装画や挿絵、CDジャケットなど幅広い分野でイラストレーションを制作。現在は東京在住。
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