DAIV開発時に意見・アイデアをいただいたフォトグラファーの方に、今回、初めて「DAIV」の実機に触れていただき感想をいただいた。
広告グラフィックなどを制作するプロダクション「株式会社アマナ」の協力を受け、クリエイターの意見を参考に開発した「DAIV」シリーズ。その完成度を、開発時に実際にアイデアを出してもらった3人のフォトグラファーに確かめてもらった。撮影の現場で頼りになる性能を満たしているのか。そしてこれからの「DAIV」に期待することとは。クリエイター向けパソコンの今と未来について話を聞く。
現在の仕事内容について
――― まず皆さんの現在の仕事についてお聞きしたいと思います。普段はどのような撮影を手がけることが多いですか?
二瓶 「僕は商品撮影が8割、モデルなどの人物撮影が2割くらいです。ほとんどが美容関係です。化粧品やモデルがメイクアップした写真ですね。元々は何でも撮っていたんですけど、ある時期からそういう仕事が専門的に来るようになりました。」
大久保 「僕は今、タレントさんと人物で8割くらいですね。元々アマナは商品撮影だけやろうというスタンスでやってたんですが、だんだん人物も撮影するようになってきて…。僕は貸しスタジオで働いていたこともあり、同年代の中では若いうちから人物撮影の経験も経てきた数少ないカメラマンだったんですね。それで人物を撮ることが多くなりました。」
小原 「僕は物撮りがメインです。ただ、スタジオワークだけというわけじゃなくて、ロケも行きますし、人物も撮ります。好きなジャンルとしてはクルマとかもありますね。割と硬質な感じの物撮りが多いです。」
現在の仕事におけるパソコンの使い方
――― それぞれの現場やオフィスではパソコンをどのように使っているのでしょうか?
二瓶 「一番よく使うのがテザー撮影ですね。カメラと接続して、撮影した画像がすぐにモニターで確認できる状態にして使います。その時にはデスクトップマシンを使います。僕の場合は、メモリーカードに記録することはほとんどありませんね。」
大久保 「僕もほぼテザー撮影が多いです。基本的に仕事が広告関連なので、即時性を持たせてクライアントにプレゼンしながら撮影するようなスタイルです。」
小原 「スタジオならデスクトップ、ロケならノートですね。ミニマムな体制で動画撮影をすることもあって、その場合は、ノートパソコンをモニター代わりにつないでライブで画像を見ながら撮影することがありますね。」
大久保 「僕もノートパソコンで撮影することは多いです。最近のSSDを積んだモデルなら動きが速いので。ただ、その場合、モニターは別に持っていきます。社外でもインドアでの撮影ならデスクトップを持ち出すこともありますが、かなり荷物が多くなっちゃうんで、電源が取れる場所ならノートパソコンと外付けのモニターという組み合わせが多いです。」
――― 基本的には撮影時にパソコンを使われているそうですが、撮影後はどうですか? 撮影データの処理などにパソコンは欠かせないと思います。
二瓶 「アマナはレタッチ専門のスタッフがいて、僕の場合はレタッチはほとんど担当しませんね。たまに仕上がりの意図を口頭で説明するのが難しい場合は、撮影現場で『Adobe Photoshop』を使って加工後のイメージを簡単に組むことはあります。それをレタッチャーに渡して完成させてもらうわけです。もちろんRAWからの現像は自分でやりますよ。」
大久保 「大幅にレタッチを入れるものに関してはレタッチャーに頼みますけど、トーン調整とか歪みの修正とかは自分でやりますね。ですから、まずは『Capture One』を使ってテザー撮影して、その後は案件にもよりますが、『Adobe Lightroom』でトーン調整して現像し、書き出すところまでを自分でやることが多いですね。」
「DAIV」の開発段階で出した意見やアイデア
――― 「DAIV」の開発にあたっては、みなさんに意見を出していただくことになりました。クリエイター向けのPCをコンセプトに作るということで、まずフォトグラファーやムービーを撮られている方の意見を反映したいという狙いがあったからです。その時にはどんなアイデアを出されましたか?
二瓶 「最初に何タイプか試作機があって、その中から選ぶような流れでした。その時に『移動しやすい方がいい』という話はしましたね。社内での撮影でもスタジオから別のスタジオに移動することが毎日のようにあるので、筐体をしっかり持てるパーツがあって、持ち運びやすい形状がいいと思ったんです。それだと『ノートパソコンでいいのでは』という話になりますが、入出力の端子類が多くないとダメなんです。」
大久保 「僕は『ジャック類が上にあった方がいい』と話しました。我々はパソコンをラックにセットして使うことが多くて、コードが床を這ってると足を引っ掛けて抜いてしまうことがあるんです。だから上にあるとうまく逃しやすいんです。」
二瓶 「あとはノートパソコンの場合は、メンテナンスが難しいですよね。撮影したデータはHDDごとバックアップに残すことが多いので、デスクトップならカバーを外してすぐに取り出せるので便利です。その辺の扱いやすさも重視しました。」
フォトグラファー
大久保 歩さん
1984 エーススタジオ 入社
1985 アーバンパブリシティ株式会社 入社
2008 毎日広告デザイン賞 第3部 広告主参加の部/準部門賞
2009 広告電通賞 新聞 生活用品・家庭用機器部門 準部門賞
2010 広告電通賞 新聞 情報・通信部門 最優秀賞
2011 2011年度グッドデザイン賞
2014 株式会社パレード設立と同時に代表取締役に就任
大久保 「確かにデスクトップだと拡張性があるので、後付けのHDDやSSDをいくつか使い回せたりするところがいいです。それにとにかく端子類は多い方がいいと思っていました。撮影ではモニターを2台使うことが多いですし、プリンターやタブレットもつなぎます。メモリーカードを途中で挿すこともあります。そのための拡張ポートを追加している人もいるくらいですから。」
小原 「僕の場合は、普段使う機材が基本的にヘビーデューティな作りになっているので、その要素があったらいいなと思いました。デスクトップを屋外などに持ち出す場合は、元々あった場所から降ろして、専用のケースに入れて、梱包して、ロケに持って行って、現場でセッティングして…と何かと動かすことが多いので。その度に設定が変わったりすると問題があるので、よりタフな方がいいとは思っていました。」
完成した「DAIV」の印象
――― では実際に完成した「DAIV」の印象はどうでしょうか?
二瓶 「最初は思ったより全体のサイズが大きく感じましたが、ハンドルがあるので結構持ちやすいですね。これならスタジオ間でのちょっとした移動が楽になると思います。」
小原 「オプションでキャスターを付けられるのはいいアイデアだと思います。デスクトップマシンでも何かと移動させることが多いので、これは便利だと思いましたね。」
――― 前後にポートがあって、USB端子は前面に2つ、背面に8つ配置しています。このバランスはどうでしょうか?
大久保 「いいと思いますね。前面は普段はあまり使わず、ピンポイントで使うことが多いので、それほど数は必要ないと思います。逆に、撮影の現場だと大体後ろから周辺機器をつなぐので、背面に多いとやりやすいですね。」
二瓶 「僕はHDMI出力が使えるところも便利だと思いました。タレントさんの撮影だと市販されているテレビに映し出してチェックすることがあって、通常のモニターではなく担当の人向けにテレビを用意することもあるんです。だから最初からHDMI端子を付けられる仕様になっているとありがたいです。」
大久保 「意外と正面のポート類をまとめた部分がいいですよね。筐体の上の方にあって、ちょっと斜めになってるので使いやすいと思います。上を向いていると埃が心配になりますが、筐体がひさしのようにカバーしているので問題ないですね。」
二瓶 「下にあるより上側にある方が絶対便利ですよね。足元に置いて使うことが多いので、手が届きやすい場所にあるのはいいと思います。」
――― 前面の電源スイッチは小原さんのアイデアだったそうですが?
小原 「そうですね。僕らが普段使うストロボのジェネレーターは、ダイヤルをひねってクリックしながら使うタイプが多くて、そのイメージで提案しました。ちょっとアナログな感じで、メカを使っている雰囲気も出てくるんじゃないかと思ったんです。」
大久保 「背面が主電源で、前面にも電源があるんですね。基本的に後ろを入れておいて、使うときにその都度前のスイッチでオン・オフするという使い方になるわけですね。」
フォトグラファー
小原 清さん
1973 岩手県に生まれる
1992 コミュニケーションアート専門学校卒業
1999 株式会社アマナ 入社
2006 第74回毎日広告デザイン賞/部門賞
2006 ニューヨークフェスティバル/Finalist
2006 ロンドン国際広告賞/Finalist
――― 取り外しできるフロントパネルの印象はどうでしょうか?
小原 「僕はパネルを外したままの中身がむき出しの感じもカッコイイと思いました(笑)。 メカっぽい感じが強調されて。」
二瓶 「下の吸気部分につながるパネルも簡単に外せるんですね。これは、溜まった埃を掃除するときに便利そうです。」
大久保 「結構、埃がすごいんですよ。しばらく掃除していないと、びっくりするくらい着いていることがあります。オフィス内では掃除しちゃうと周りに迷惑がかかるかなと思うくらい。」
これからの「DAIV」に期待すること
――― みなさんはクリエイター向けのパソコンにはどんな要素を求めていますか?
二瓶 「故障しないことが一番重要だと思います。CPUなどの中身ももちろんですが、外側に面しているポート類も大切です。認識しなくなって困ったことがありましたから。」
フォトグラファー
二瓶 宗樹さん
1973 茨城県に生まれる
1998 九州産業大学 大学院 芸術研究科 写真専攻修了
2000 株式会社アマナ 入社
2009 第25回読売広告大賞 ヘルス&ビューティー部門/ 優秀賞
小原 「僕も基本は同じですね。撮影の現場で起こってはいけないトラブルは、起動しないとか接続できないといったことで、これは絶対避けないといけません。あとはデータが消失しないといった、基本的な信頼性の高さが大切です」
大久保 「カメラマンで一番困るのは撮影の現場がストップしてしまうことなので、ジャックや電源周りは信頼性の高いパーツを使ってほしいですね。」
小原 「誰にとっても使いやすい形状であることも大切だと思います。ロケなどでパソコンを持ち運ぶ際は、アシスタントが移動や梱包を担当することがあって、日によって人が違うこともあります。だから扱いやすい仕様であることも実は大切なんです。その点、DAIVのハンドルやキャスターはわかりやすい形状なのでいいと思います。」
――― では今後のDAIVにはどんなことを期待されますか?
小原 「ノートパソコンのようにバッテリーを積めるといいですね。建物の関係で停電することや、ケーブルに足を引っ掛けて抜いてしまうこともあって、そうなるとそれまで積み上げてきた作業がゼロになってしまうので。だから少しの時間でもいいので、トラブル回避のための時間をバッテリーで稼げるといいと思います。」
大久保 「僕もバッテリーは欲しいですね。実際、電源ケーブルが抜けたことは何度かあって、大抵作業中なんです。データのバックアップを取っていたり、現場でのレタッチ中だったり。ですから30分か、それが無理なら作業中のデータを保存できる数分くらいだけでもバッテリーで駆動すると助かります。」
小原 「そう考えると、電源が落ちたことがわかるランプとかも必要ですね。大きめの警告音でもいいかもしれない。」
二瓶 「あとはカメラがどんどん小型化していってるので、パソコンももう少し小さくなってもいいと思います。現状のデスクトップのようなサイズや形状に固執しているわけではないので、必要な作業が満たせるのであれば、どんどん小さくなったり手軽に扱えるようになって欲しいです。」
小原 「ただ、写真のデータサイズが今大きくなってきていて、核となるマシンはデータ保存のためにも現状のデスクトップのようなスタイルがまだ安心できると思います。クラウドも使えますが、僕らの仕事の場合はセキュリティの面でローカルに保存しなければいけないことも多いですし。それにプラスして、柔軟に使えるコンパクトなマシンがあると本当に便利でしょうね。」
大久保 「僕も二極化して行く方向がいいんじゃないかと思います。核となるデスクトップはとにかく壊れないこととメンテナンス性が気になるので、その辺の信頼性をより高めてもらいたいと思います。」
DAIV-D シリーズ
広告グラフィックの多くを制作するプロダクション「株式会社アマナ」の協力を受け、最前線で活躍するクリエイターの意見を参考に写真や動画、イラスト、3DCGなどの使用に向いたクリエイター向けパソコン。今回のインタビューでは、 インテル® X99 チップセットをベースにし、高いカスタマイズ性を誇る DAIV-DGXシリーズ を試用していただいた。
様々なクリエイターのニーズに、高い拡張性で応えるハイエンドPC