常に一歩早いVR向け製品を
投入しているため安心感が強い
DVERSE Inc.
沼倉 正吾さん 松岡 裕介さん
VR技術を使用した直感的なユーザーインタフェースにより、3DCADを利用したコミュニケーションの円滑化を行うことができる。 本ソフトウェアの開発を手掛けるDVERSE Inc.の代表を務める沼倉さんと、SYMMETRYのUI開発を務める松岡さんに、VRと3DCADの可能性、クリエイター向けのデスクトップマシン「DAIV-D」シリーズがもたらす恩恵について語ってもらった。
特殊なスキルを必要とせず、VR上で実際のスケールを感じることができる
――― まず、「SYMMETRY alpha」について、どのようなソフトウェアであるのか、このソフトウェアを使用することで、どのような恩恵が得られるのだろうか。
沼倉 「『SYMMETRY alpha』は2017年2月14日にリリースされたVRソフトウェアです。 基本的に建築/設計の現場においては、CADによる3Dデザインを行い、完成イメージの確認や、設計に齟齬が無いかを確認します。 『SYMMETRY alpha』は、『確認』のフェーズを、より簡単に、より整合性の高いものにするソフトウェアです。 CADで製作された3Dデータを読み込ませると、VR上で簡単に建築物のデータを実寸サイズで確認ができます」
――― たしかに、世の中にVRのコンテンツも広まってきているが、どれも没入感が高く、パソコンのモニタで感じるものよりも、実態感を認識できるのはインパクトが大きいものだろう。
沼倉 「最近ではマンションなどで部屋の中を360度カメラで撮影した画像を確認することで、図面よりも分かりやすくなってきていますが、魚眼レンズで撮影されているため、実寸よりも広く見えてしまうことがあります。 従来のパソコンのモニタ上で確認する3Dデータも同じようなことがあって、栄える映像となるように、広角気味の絵作りでデータ確認を行っています。そこで、デザイナーと閲覧者との齟齬が発生してしまうことがあります。 VRで3Dデータを確認するメリットは、高さや奥行きなど、実際のスケール感が分かりやすく、閲覧者が見たいところを見たいように実寸で確認することができるため、デザイナーの意図と閲覧者の感覚が同一に、明確になります」
――― VRはごまかしが一切効かない。効かないからこそ、適切なコミュニケーションを可能にし、最終的に相互で満足のいく成果が期待できる。
沼倉 「また、『SYMMETRY alpha』の強みは、その容易さにあります。 今までは、3DCADのデータをVR上で再現するためには、専用にプログラムを組む。もしくは、『Unity』や『Unreal Engine』といったゲーム開発エンジンを使用しなければなりませんでした。 そのため、実施するためにはプログラミングの知識や、ゲーム開発エンジンを活用する知識が必要だったのですが、『SYMMETRY alpha』はデータを読み込ませるだけでVR上に3DCADを出力することができるため、特殊なスキルが必要ありません」
VR-CADの可能性は、建築土木以外の不動産・空間デザイン・教育にも広がる
――― 現在、「SYMMETRY alpha」は、「Steam」というプラットフォームで無償公開されている。「Steam」というと、PC向けゲームのダウンロードプラットフォームのイメージが強いが、ビジネス向けのソフトを「Steam」上で公開するのはなぜなのだろうか。
沼倉 「『SYMMETRY alpha』は対応するヘッドマウントディスプレイの第一弾として、HTC VIVEを採用しています。VIVEは『Steam』プラットフォームを使用してセッティングを行います。 また、『Steam』は全世界で1億5000万人以上のユーザーがいる巨大なプラットフォームですので、受け皿が膨大であることもポイントです。 法人様における『SYMMETRY alpha』の導入に際しても、VIVEのセッティングに『Steam』が必須環境であるため、導線的にもスムーズです。
また、『SYMMETRY alpha』は、無償公開している『ビューワー』ソフトウェアです。 今後もフリーで提供を行い、有料になることはありません。 この次に公開していくのが、『エディット』を可能にする有償版です。VR上で3DCADを作るというよりも、VR上の3DCADにインタラクションを付与していくソフトウェアになります。 具体的には、元々完成されている3DCADデータに対して、背景の天気を晴れから雨にすることや、リビングの扉を開閉できるようにするなど、動的に確認をすることができるようになるため、一層作り込みたい方々に向けた製品です」
――― 単純なVR上における3Dデータの閲覧だけにおいても圧倒されるモノがあるが、インタラクションも加わることで更なる没入感を得られることは、想像に難くない。実際に「SYMMETRY alpha」を導入した方々の反響はどうなのだろうか。
沼倉 「『SYMMETRY alpha』は建築/土木向けの紹介がされていますが、実際には不動産・インテリアデザイン・空間デザイン・教育などにも使用されています。 従来、VRを導入する際は先にお話ししたプログラミングスキルなども影響し、外注によるVRコンテンツの専用製作や、元データの加工を依頼する必要がありました。そのため、大きい案件でないと採用されにくい環境にあったのですが、『SYMMETRY alpha』は無償で利用可能です。また、対応している3DCADソフト『SketchUp』もパーソナルユースでは無償版が利用でき、導入障壁が一気に下がっています。
そのため、コストの関係で中々導入できなかった教育の分野においても普及が始まっています。
具体的には、歴史的な建造物の3DCADデータを読み込み、当時の街並みをVR上で再現。教授と生徒が一緒にVR体験することで、実寸大の映像を用いて文化背景などを教えるようなこともできます」
――― VRであれば、テキストや写真などよりも遥かに多い情報量を持つため、より理解度が深まる講義ができるであろう。今後、博物館のツアーコンテンツなどにも期待が膨らむ。
沼倉 「個人のユーザー様の反響も良く、インターネット上に公開されている3DCADデータを簡単に読み込むことができるため、自分の好きなロボットを等身大で閲覧したり、憧れの車などをショールーム的に配置したりして楽しんでいらっしゃる方々が多いようです」
マウスは常に一歩早いVR向け製品を投入しているため安心感が強い
――― 様々な分野に可能性が広がる「SYMMETRY alpha」だが、VR専用であるため、従来の3DCADソフトとは、パソコンに求められる性能要件は異なるはずだ。どのようなパソコンであれば快適なVR体験が可能なのだろうか。
沼倉 「基本的には、NVIDIAが提唱している『VR Ready』の要件を満たしたパソコンであれば、問題なく動作します。しかし、業務などで使用する場合は、モデルデータ容量が非常に大きなものを読み込むことも想定されます。その際『VR Ready』の最少要件である、GeForce® GTX 1060/3GBでは処理が追いつかない場合があるため、余裕を持った性能指標として、GeForce® GTX 1080を使用することを推奨しています。希望的には、『今手に入る』最も性能の高いグラフィックスを搭載しておくことが好ましいですね」
――― DVERSE Inc.では、2015年よりVR向けの開発機材として、マウスコンピューターの最新製品を常に採用してきている。沼倉さんと、UI開発を務める松岡さんの感じるマウスコンピューター製品の魅力とはどういった点にあるのだろうか。
沼倉 「当社はVRのソフトウェアメーカーであるため、開発の現場では常に最新かつ高性能なパソコンが求められます。マウスコンピューターはパソコンメーカーで、いち早くVRにフォーカスした製品を投入し、常に最新スペックのクリエイター向けパソコン・ゲーム向けパソコンをラインナップしているので安心感が強いですね」
――― マウスコンピューターでは、2014年よりゲーミングパソコンブランド「G-Tune」にてVR向けの製品展開を行ってきた。2016年にはクリエイター向けパソコンブランド「DAIV」からもVR向け製品を投入している。
沼倉 「VRソフトウェア開発にあたり、VR体験用としてG-TuneのLITTLEGEARシリーズを使っています。DAIVに関しては、VR体験に加え、3Dモデリングも含めた活用を行っています。MAYAや3ds MAX、3DCADを使う際にQuadroシリーズのグラフィックス選択肢があるのがありがたいですね」
松岡 「DAIVシリーズは、拡張性と廃熱処理が素晴らしいです。3Dモデリングなどは、グラフィックス負荷をかける作業が長時間に及ぶことも珍しくないので、Quadro® を搭載かつ高い廃熱処理を実現しているのは安心できます」
――― 「SYMMETRY alpha」推奨パソコンは、GeForce® シリーズとQuadro® シリーズのグラフィックスを搭載した2種類のラインアップがあるが、「SYMMETRY alpha」を今後導入するユーザーは、どちらの製品を選択すると良いのだろうか。
松岡 「個人のユーザー様など、シンプルにVR動作をさせることを目的とするのであれば、GeForce® シリーズが良いと思います。ただ、企業様では、VR動作だけでなく、3Dモデリング業務との兼業で行うこともありますので、安定性の高いQuadro® シリーズをオススメします。オフィスの物理的なスペースなどにも影響してきますので、一台でVRと3Dモデリングを両立できるのは、非常にメリットが高いのではないでしょうか」
沼倉 「VR体験の観点でお話しすると、当社のようにVR展示会に出展することが多い場合は、G-TuneのLITTLEGEARシリーズもオススメです。高性能なパソコンですが、とてもコンパクトな作りなので、大き目なスーツケースであれば中に入れてそのまま持ち歩けます」
松岡 「スーツケースに入れられるので、飛行機の機内持ち込みができるのがいいですね。イベント会場に配送指定しても、混雑で時間通りに到着できない可能性もあるので、念には念を入れて、イベント時はLITTLEGEARをハンドキャリーで持ち歩くようにしています。 ノートパソコンでもVR体験ができるようになってきていますが、デスクトップパソコンの高い廃熱処理能力はイベント時に安心感があります」
VRはエンターテインメント利用だけではなくビジネス利用の可能性も大きい
――― 2015年にVRが話題になり始めたころは、エンターテインメント利用の可能性が着目されていたが、「SYMMETRY alpha」のようにビジネス利用における普及も大きく期待が高まる。今後のVRはどのような可能性が広がっていくのだろうか。
沼倉 「VR自体はエンターテインメント、映画などで話題が大きいが、当社はビジネスでの利用が大きいと考えています。今後はVR空間の中で、異なる拠点同士でビジネスミーティングを行ったり、3DモデルデータをVR空間で共有し、進行の意思決定をするなど、通常の業務フローの中にVRが自然に入り込んでくるでしょう。2017年はビジネスでのVR利用が急速に広まってくると考えています」
DVERSE Inc.
沼倉 正吾さん
1973年生まれ。 株式会社ナスカークラフト代表取締役として、ゲームソフト開発、クラウド映像配信サービス開発など新規事業の立ち上げに従事。2014年にVRソフトウェア開発を専門としたDVERSE Inc.を米国に設立。CEOとして、様々な企業とのVRに関する共同開発や建築・デザイン向けツール「SYMMETRY(シンメトリー)」の開発を行っている。
DVERSE Inc.
http://dverse.me/
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松岡 裕介さん
1986年生まれ。 2011年から2013年までAMS Inc.でFrontend Engineerとして勤務し、10以上のECサイトを構築。2014年インドに渡航し、 インドのProgramming Schoolでプログラミングを学びながらCloudLancer India Pvt.Ltd.でFrontend Engineer/Designerと してインド向けITサービスの開発を行う。DVERSE Inc.ではVR EngineerとしてProduct開発及びR&Dを担当している。
DAIV-DQX シリーズ (Quadro® 搭載モデル)
広告グラフィックの多くを制作するプロダクション「株式会社アマナ」の協力を受け、最前線で活躍するクリエイターの意見を参考に写真や動画、イラスト、3DCGなどの使用に向いたクリエイター向けパソコン。3DCG/CAD等への安定性と高い処理能力でクリエイター、エンジニアからの支持が高いQuadro® グラフィックスを搭載したモデル。
様々なクリエイターのニーズに、高い拡張性で応えるハイエンドPC