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愛知県はICT活用教育を推進し、一部の公立高校にマウスコンピューターの高性能PC「G-Tune」を導入した。
春日井商業高等学校は愛知県で最初に情報処理科を設置して、時代に対応した実践力の育成に力を入れてきた。
2023年に春日井泉高校に生まれ変わる同校は、新しい時代を生きるための学びに取り組んでいく。
愛知県立春日井商業高等学校は、1969年に地域の強い要望により県立学校として春日井市で2番目に設置された単独商業高校だ。71年には情報処理科を愛知県では初めて、全国でも7番目に設置した高校で情報活用教育には力を入れてきた。
創立50年を超える歴史と伝統を誇る同校は、情報処理科、情報会計科、国際ビジネス科の3学科で構成され、一括募集で入学した生徒は2年生になるとそれぞれの学科に分かれて専門科目を学習する。
愛知県では、高等学校の全日制課程への進学率低下や県立高校における全県的な欠員が急増するなど、県立高校を取り巻く環境が大きく変化していることや、中学校卒業者数が2035年度までに大きく減ると予想されることを受けて、県立高校の役割を改めて見直し、30年代半ばを見据えた愛知県立高等学校の再編将来構想を21年12月に策定した。
春日井商業高校は、商業高校の持つイメージを一新して、地域における活動を通じた探究的な学びを推進する地域密着型の学校として再編される。23年4月に県立春日井泉(かすがいいずみ)高等学校に校名を変更して、ITビジネス科2クラス、地域ビジネス科3クラス、生活文化科1クラスの高校へと生まれ変わる。
愛知県はGIGAスクール構想で高速の校内ネットワークが整備され、21年度からは生徒に1人1台のタブレットPCを貸与し、ICT活用教育を推進している。22年4月からはすべての県立商業高校でプレゼンテーションルームや高性能パソコンルームが新たに整備された。
春日井商業高校では、マウスコンピューターの高性能PC「G-Tune」を導入したパソコンルームが整備された。生徒用20台と教員用PC1台のG-Tuneとペンタブレットなどが導入され、1クラス40人の生徒が2人で1台の高性能PCを活用して学習できる体制になった。
G-Tune PM-B-L-AINA
主なスペック:インテル Core i5-10400プロセッサー、NVIDIA GeForce GTX 1660、16GBメモリ、512GB SSD(M.2)、1TB HDD
※スペックは導入当時のものであり、現行の販売製品とは異なる場合があります
春日井商業高校で情報処理科主任と商業科統括主任を務める平野翔太教諭は「1人1台持つタブレットPCとパソコンルームにある高性能PCを使い分けることができ、学習にはちょうど良いバランスになっています」と話す。
春日井商業高校のICT活用教育で中心的な役割を担っている平野教諭。「学校からの情報発信もできるようにしていきたいですね」と意欲を燃やす
本格的にパソコンルームの活用が始まったのは2学期からだが、3年生の授業では写真などの静止画像や動画の編集を行うなど、PCの利用を進めている。
課題研究の授業では導入したG-Tuneを使って、生徒自身が「青春の1ページ」と題して学校紹介のDVDを作成する課題に取り組んでいる。中学3年生に向けて学校を紹介するオープンスクールの際に披露するため、生徒が写真や動画などの素材集めから編集、DVDへの書き込みまでを行うというものだ。進学を考える中学生に年齢の近い在校生の目線で学校の魅力を紹介してもらうことで、春日井商業高校への関心を高めてもらうのが狙いだ。
教員は全体的な目標を設定し、ソフトウエアの使い方を教えたりはするが、どのような内容のDVDを作成するかは生徒に任せている。高性能PCであるG-Tuneが導入されたことで、動画や静止画の高度な編集作業が可能になり、生徒のイメージを具体化しやすくなったという。
これまでパソコンルームに設置されていたPCは性能が足りず、動画編集ソフトなどで作業すると、処理に時間がかかったり、動作が止まってしまったりすることがあったが、G-Tuneが導入されてからは快適に作業が行えるようになった。
商業科で課題研究の授業などを受け持つ内田武司教諭は「動画や画像編集のやり方を教えると、全員が前向きに取り組み、どんどん先へと進んでくれる。1~2カ月もたつと、生徒の方が教員よりもPCやソフトウエアを使いこなせるようになっていて、とても頼もしく感じる」と目を細める。
3年生の課題研究の授業で動画編集の講座を担当している内田教諭。生徒のICTへの順応力には目を見張るものがあるという
3年生の菊池ジムウェルさんはPCやソフトウエアの使い方などが得意で、教員をサポートして他の生徒にも教えるまでにICT活用能力が向上した。卒業後はゲームの専門学校に入学してゲーム開発などを学ぶ予定だ。
菊池さんは「自宅でもPCを使っていますが、学校のG-Tuneの方が処理が速いです。快適に動画編集などができるようになってうれしいです。卒業後は高校で学んだ知識を深めて、仕事に役立つ技能を高めていきたいと思っています」と希望を語る。
パソコンルームに入るなり、全員のPCを起動させ、皆に声を掛ける菊池さん。率先してクラスをサポートしている
文部科学省が推進するGIGAスクール構想や新学習指導要領で目指す高校でのICT活用には教職員の技術向上が欠かせない。愛知県が公立高校に整備したPCには高度な画像や動画編集ソフトが導入されているため、教員自身も技量を高めていかなければ、授業の中で生徒に教えていくことは困難だ。
そのため県としても教員向け研修を強化していて、ソフトウエアの使い方などを専門学校の講師などから学ぶ講座などに参加できるようにして、教員が専門的な知識や技能を補完・発展させられるようにしている。
愛知県は21~25年度を対象とした第四次愛知県教育振興基本計画「あいちの教育ビジョン2025」を推進している。「基本的な取組の方向」として「自ら学びに向かう教育を充実させ、自己の可能性を伸ばす力を育む」ために「情報活用能力の育成とICT活用教育の推進」を取り組みの1つに設定する。
愛知県全体では21年度から県立高校と特別支援学校の教員を対象にICT研修「あいちクラスルーム・エバンジェリスト(ACE)」事業を実施し、オンラインで県内の教員同士が交流したり情報交換を進めたりして、ICTの効果的な活用に関する実践と普及を先導するエバンジェリストとなる教員育成にも力を入れている。
春日井商業高校にマウスコンピューターのG-Tuneを導入したパソコンルームが整備されてからまだ1年もたたないが、高性能PCのおかげで授業効率が上がり、動画編集ソフトの活用や作品の制作が進んだ。
平野教諭は「23年度からは新たに春日井泉高校としてITビジネス科と地域ビジネス科に生活文化科が加わります。生活文化科という家庭科の中でも情報デザインを学び、それぞれの学科の中でICTを活用することで、新しい学びを実践していきたいですね」と語る。
愛知県の中でも春日井市は、20年ほど前から教育の情報化に取り組み、校務改善にICTを活用してきた。市内の全小学校の各教室には早くからICT機器が整備され、20年から始まったGIGAスクール構想を通じて授業で日常的にICT活用を進めている。
平野教諭と内田教諭は春日井商業高校の中心となって教員のICT活用を推し進めており、教員以上にデジタル活用の素養を持つ生徒たちの能力を伸ばしていきたいと考えている。「生徒のデジタル活用はどんどん進んでいます。最近はSNSで情報を入手する生徒が増えており、情報によってSNSを使い分ける生徒もいます。生徒の安全のためにITリテラシーの向上には配慮しますが、生徒のやりたいことは応援してあげたいといつも思っています」と平野教諭は微笑む。
GIGAスクール構想で1人1台環境が当たり前の小中学校で学んできた児童・生徒が進学してくる今後のために、高性能PCが用意されたICT環境で、より深い学びを実践できる場にしていく。それが春日井商業高校が目指すICT活用教育の姿だ。
マウスコンピューターのG-Tuneが並ぶパソコンルーム。平野教諭と内田教諭は他の教員を支援しながら学びのDXを推進していく
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