撮ることに集中するためにストレスなく使えるパソコンを選ぶ
写真作家
高橋 伸哉
見る者の心を惹きつけ、物語を感じさせる写真で高い評価を得ている写真作家、高橋伸哉さん。Instagramでの人気を背景に自らの作風を確立し、現在はスナップ写真からポートレートまで、様々なジャンルで活躍しており、その作品は高い評価を得ている。独自の表現をどう模索し、美しい写真へと昇華させているのか。高橋さんの現在までの歩みと、カメラとパソコンを通して自分のイメージを表現するための方法を探る。
映画をイメージさせる写真が心を揺さぶる
鮮やかな夕景の中で何かをじっと見つめる女性。暗い室内にたたずみながら振り返る一瞬の表情。
“ドラマチック”と評される数々のポートレートは、高橋伸哉さんの代名詞とも言える作品だ。しかし、その活動は多岐に渡り、ライフワークのスナップ撮影から、写真教室、機材レビュー、書籍の執筆なども手がけている。兵庫を拠点としながら1ヶ月の半分は東京で仕事をこなし、海外にも度々足を運ぶなど、多忙な日々を送る。そんな中でも写真の作風については、ブレることなく独自の表現を貫いている。
「僕の写真には『情景ポートレート』という冠があって、ストーリーを感じられる撮り方を常に意識しています。人物を正面から撮るのではなく、横顔や振り向いて動き出す瞬間の様子をとらえたり、自然の風景や室内の様子と組み合わせることで、ドラマチックな雰囲気に仕上げたりしていますね。映画的や情緒的と言われることもあります」
その表現の源にあるのは、かつて好きだった作品の数々。幼い頃から見ていた映画や、若い頃に出会った写真家からの影響が強いという。
「幼稚園の頃から映画をよく見ていて、若い頃はフランス映画が好きでした。今もテレビ番組はあまり見ずに、映画をずっと流したりしています。写真家はエリオット・アーウィットが好きでした。以前、働いていたスタジオに写真集がいっぱいあったのでその影響ですね。アーウィットの写真は教科書的ではなく、どこかユーモアがあってそこに惹かれていました」
好きなものを撮るために遠回りした道のり
高橋さんの作風は、多方面から高い評価を得ている。撮影に関する執筆も多く、全国で開催される写真教室はすぐに満枠になるほど人気だが、プロとして活動を始めたのはわずか5年前のこと。人気の写真作家となるまで、どのような道を歩んできたのか。
「カメラに興味を持ったのが18歳くらいで、本格的に撮り出したのがスタジオでアシスタントの仕事を始めた20代前半からですね。映画が好きだったからか、何かを表現することに憧れていて、カメラのファインダーから見える景色で表現することに徐々に惹かれていきました。ただ、スタジオでの仕事は商品撮影やモデル撮影の手伝いで、指示に従ってライティングや配置を変えるような作業の繰り返し。つまらないと感じて、自分はシンプルに写真を撮るのが好きなのだと実感しました(苦笑)。それでも自分なりに楽しみながら4年ほど続けましたね」
しかし、その後は写真家として独立するのではなく、全く別な道に進む。写真や撮影とは関係ない企業で働く、いわゆる会社員としての生活である。
「結婚して家族ができるタイミングだったので、しっかり稼がないといかんなと思ったからです。そのままスタジオで働く気はなく、写真誌などでプロの作品を見ると自分には無理だとも感じていました。写真に関しては趣味で好きなものを楽しく撮っていけばいいかなと……」
平日は会社で働き、週末や休日になると愛用していたニコンのフィルムカメラ「FM2」を持ち出して、気になる景色や街並みなどを撮る。そんな生活を繰り返す中で、40代になったときに転機が訪れた。
「30代の頃からブログをやっていて、旅の写真などを載せたりしていました。その後、Instagramが登場して、最初は少し斜に構えて見ていたんですが、たまたま会社の同僚に『面白いからやってみれば』と勧められたんです。それでアカウントを作って写真を上げていったら、写真関連の知り合いやInstagramの世界で有名だった人から反応があって、すぐにフォロワーが増えていきました」
瞬く間に人気のインスタグラマーとなり、以前から「50歳までに好きなことをやれる状況にしたい」と考えていたこともあって独立を決意。二人のお子さんが社会人になるタイミングも重なって、写真家としての道を歩み始めた。
「独立したばかりの頃はたまたまInstagramなどの企業案件のお話がいくつかあって、それをしばらく続けていました。商品撮影も手がけていましたね。ただ、お金を稼ぐためだけに撮り続けるのは嫌だったので、早く自分の作品性で勝負できる写真作家という立場になりたかったんです。そこでインスタグラマーとしての仕事を減らして、写真作家としての土台を固めていきました。今は独立当初に思い描いていたステージに進めています。今後はもっと実績を高めて、写真展を開催したり写真集を出版したりしたいですね」
緻密に作り上げていく情景ポートレート
現在は情景ポートレートを軸に、自分の作風を明確に打ち出した写真を国内外で撮っている。高橋さんはどのようにして思い描くイメージを、一枚の写真として完成させるのか。
「僕の場合はやはり映画の影響が強く、印象に残っているシーンを再現するような感覚で撮っています。例えば、フランス映画なら室内で明け方のような微妙なライティングのシーンが記憶に残っていたなら、そのイメージで撮ってみようと試みるとか。映画だと登場人物の心情を表現する際に、かなり顔に寄ってフレームの上下が少し切れることがあって、そのイメージが強く残っていると僕が撮る写真も自然とすごく寄った画角になるんです。そうすると出来上がった写真は、グッと人物の心情を表現できてるんじゃないかなって、そんなふうに思ったりしますね」
美しい景色と人物を絡めて撮る際にも、独自のこだわりが貫かれる。心を揺さぶる写真を生み出すために、撮影の現場では緻密に要素を積み重ねていく。
「景色を絡めたカットでも、映画のワンシーンのような見え方を意識します。例えば河川敷で女性が座っているカットなら、そのまま撮るのではなく、夕陽が斜めから顔に当たるタイミングで撮ると、髪が暖色に染まって立体感や情緒が生まれます。意識的にカメラ目線を外すことも多いですね。横を向いていたりうつむき気味だったり、ときには完全に後ろを向くときもあって、それも映画のように動きのある雰囲気を作りたいと自然に考えてしまうからだと思います」
RAW現像を経て、イメージが完成に近づく
高橋さんが主に使用するカメラは、ライカ M10-RとFUJIFILM X-Pro3がメイン。スナップ撮影ではリコーのGRデジタルシリーズを使うことも多い。中でも自分の作風にマッチするというライカ M10-Rは、初めて手にしたときから魅了され、今や最愛のパートナーとなった。これらのカメラに加えて、パソコンも高橋さんの作品に欠かせないツールだ。撮影時のイメージを軸に、RAW現像で明暗や色味を調整してよりドラマチックな1枚へと仕上げていく。
「僕はわりと多くシャッターを切るので、一度に2000枚くらい撮ることもあります。ただ、その中でこの辺のカットが良かったという感覚は持っていて、そこをピックアップするので、実はセレクトにはそれほど時間をかけていません。まずは撮影時の感触が良かった数枚の中から、表情を基準にベストな1枚を選びます。目線が合ってないカットが、カメラを意識していないナチュラルな感じが出ていて、自然とそれを選ぶことが多いです」
1枚の現像にかける時間も1分ほど。完成のイメージを明確に持っているのに加えて、これまで培ってきたノウハウを駆使することで、効率よくスムーズに作業を進めていく。
「使用しているソフトは『Adobe Lightroom Classic』だけで、細かなレタッチなどもあまりしないんです。自分なりに作ったプリセットを30種類くらい用意していて、それを季節や天候に合わせて使い分けています。そこから人物の見え方を優先して、全体の色味を暖色や寒色に変えてみたり、背景のシャドーがつぶれないように少し起こしたりと微調整していきます。ただ、これだけでも印象は大きく変わって、仕上がりは段違い。自分が思い描くドラマチックな写真を完成させるには欠かせない作業ですね」
軽快に使えるパソコンが撮影に集中させてくれる
国内外を渡り歩きながら撮影に取り組む高橋さんがパソコンに求めるのは、ずばり持ち歩きやすく、軽快に作業できること。薄型軽量でハイスペックな「DAIV Z6」シリーズは、そんな希望に合致したノートパソコンで、実際にRAW現像を試してもらうと納得の表情を浮かべた。
「まずこの軽さがいいですね! 僕は移動が多いので、少しでも荷物が軽くなると助かります。使うカメラもコンパクトなものが多くて『軽さは正義』だと思っています。画面がノングレアなところも気に入りました。僕は写真をプリントするときにマットな用紙を使うことが多いので、見え方が近いノングレア液晶は使いやすいですね」
普段は外付けのカードリーダーで撮影したデータをパソコンに取り込んでいるが、「DAIV Z6」は本体にSDカードリーダーを装備。そこから直接取り込めるところも便利だそうで、現像に関わる一連の作業がスピーディーに進められることに感心していた。
「ライカ M10-Rは有効4000万画素で、1度の撮影で約200GBも撮ることがあり、データの取り込みも現像処理も時間が必要になります。でも「DAIV Z6」は大容量のデータがスムーズに取り込め、現像作業もストレスなくできますね。ピントのチェックのために拡大するときも動きはスムーズです。やはり僕は写真を撮ることが好きで、その瞬間に集中したいタイプ。だからこそ現像作業は、高性能なノートパソコンを使って素早く済ませたい。僕と同じように、撮影に時間を費やしたい人には、このパソコンはピッタリです。写真を撮る楽しみをより一層引き出すことができ、現像作業も効率的に行うことができます。ぜひ、この高性能なノートパソコンを使って、自分のクリエイティブな能力を発揮してみてください!」
クリエイター紹介
写真作家
高橋 伸哉
1972年、兵庫県出身の写真作家。人物ポートレートや風景、日常スナップを得意とし、全国や海外を旅しながら写真を撮る日々。また作家活動のほか機材レビューの執筆、写真教室の講師などを手がける。写真教室は常に満杯になるほどの人気を集め、定期的に開催する写真塾は、200名の生徒が参加するほど。著書に『情景ポートレートの撮り方』(玄光社)、『写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか?』(インプレス)などがある。
Instagram
https://www.instagram.com/t.1972/
使用したパソコン
DAIV Z6シリーズ
DAIV Z6シリーズは、高解像度写真のRAW現像や加工、映像処理を高速化させる高性能グラフィックス搭載。本体重量は約1.49~1.65kgと持ち運びに躊躇しない「軽さ」を実現したノートパソコンです。
デジタルカメラ
ライカ M10-R
Leica
写真編集・管理ソフト
Adobe Photoshop
Lightroom Classic
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