©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
©TSUBURAYA PRODUCTIONS ©Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi ©ULTRAMAN製作委員会
まだ誰も見たことのない、
3DCGでの映像表現を目指して
『攻殻機動隊 SAC_2045』
攻殻機動隊シリーズ史上初のフル3DCGアニメーションで制作された作品。
『ULTRAMAN』
SOLA DIGITAL ARTS初のテレビシリーズ。全編モーションキャプチャーで制作された作品。
-
※1
-
※2
-
※1
-
荒牧 伸志
1960年生まれ 福岡県出身
日本における3DCGアニメーションの第一人者として数多くのCG作品を手掛ける。
アニメーション界でメカニックデザインを中心に活躍し、2004年に監督を務めた『APPLESEED』はフル3DCG、トゥーンシェーディング、モーションキャプチャーという手法を用い、世界中のクリエイターに大きな影響を与えた。 -
松本 勝
1974年生まれ 岡山県出身
荒牧氏のフルCG初監督作品「APPLESEED」にモデラー兼コンポジッターとして参加。
3DCGという
表現が
自分の
肌に合っている
- ー 今のスタイルに行きついたきっかけを教えてください。
- 荒牧伸志:僕自身は80年代から始まり、おもちゃやアニメーションの演出、デザインなどを2Dで手描きしていました。3DCGという方法があるのは知っていたんですが、当時は使っていませんでしたね。
アニメーターさんに複雑なメカなどを一枚一枚手描きしてもらうのが大変だとは感じていたので、将来的に3DCGを使って解決できればいいなとは、ずっと思っていたんです。 -
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
- 90年代になってからですかね。本格的に3DCGを仕事にしたくて、自分でもPCを買って勉強し、3DCGを扱っている会社に入りました。当時は自分で作るというよりは、ゲームのムービーやアニメーションの演出をしていました。そこで複雑なメカ以外にも、キャラクターも3DCGにできるんだな、ということがわかってきまして。
-
※2
- 2001年頃に全編フル3DCGで
モーションキャプチャーを使用した『アップルシード』という映画を作る話が挙がったんです(2004年に公開)。この2つを掛け合わせた面白みを経験したこともあり、この表現方法が「自分の肌に合っている」と感じるきっかけになりました。そこから3?4本の作品を作って、自分の制作現場が必要だと感じ、「SOLA DIGITAL ARTS」を立ち上げて今のスタイルを固めていきました。その第一弾として『ULTRAMAN』、その後『攻殻機動隊SAC_2045』を作りあげて、今に至ります。
モーションキャプチャー
カメラやセンサーを使って取得した人や、物の動きのデータを数値化し、3DCGキャラクターに反映すること。
cEiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi cULTRAMAN 製作委員会
- ー アップルシードは新しい試みだったのですね。
- そうですね。それまで制作したものは、長くても10分くらいのゲームムービーでしたので。今までテレビアニメで経験してきた2Dのスタイルを混ぜつつ、どうやったら長編の動画が作れるかを探していきました。今思えば、そこが原点なのかなと。
ルックの幅こそが
3DCGの醍醐味
- ー 原作のある作品を3DCGで表現する際に、気をつけていることはありますか?
- 『攻殻機動隊』は、すでに2Dで
神山さんが映画を作られています。だからこそ引き継ぐ部分は忘れず、「3Dだからこそできるアプローチやメリットはないか」という視点は、気をつけました。
神山さん
神山健治 アニメーション監督、脚本家、演出家。株式会社クラフター代表取締役共同CEO。代表作に『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズ、『東のエデン』など。アニメ『ULTRAMAN』では荒牧監督とのダブル監督が話題となる。2011年に3D劇場版アニメ『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』を発表した。
- キャラクターモデルを作る際に、ストーリーの方向性も含めて神山さんと相談し、できるだけリアルに寄せています。キャラクターモデルって、つい足が長くて頭が小さいスーパーモデル体型のような理想郷を追いがちなんですが、この作品の場合、それだと人の動きやアクションが地につかないんですよ。
- 実際にモーションキャプチャーで動いてくれる人に、アニメのキャラクターの頭身が近いほうが、ライブ感が出るのではないかと思いまして。
『ULTRAMAN』は「特撮」としての面白さをアニメーションで表現できるようにしましたね、自分自身が世代でもありますので。「モーションキャプチャーを使ったデジタルの着ぐるみ」をイメージに、今までのノウハウも活かしながら、フル3DCGでモーションキャプチャーの制作を提案させてもらいました。
- ー 実現するにあたって、どういった点で苦労しましたか?
-
ルックの選び方は作品ごとに悩んでいます。元となる作品のテイストを踏まえて、リアルな表現かアニメーションか、合う方を選んでいますね。
ルック
3DCGモデルの見た目を指す言葉。
- 例えば、ルックがアニメなのに動きがリアルな表現だと、「気持ち悪い」なんて言われることもあるわけで。見慣れていない表現だから仕方ないのですが、そこを違和感なく見せることで、作品に没入してもらえるように意識しています。
それこそ最初は違和感があるかもしれないですが、「見ているうちにみんな引き込まれるだろう」という、ちょっと乱暴なイメージで作ったりもしますね。3DCGのいい部分を全面に出すことで、違和感を乗り越えられるんじゃないかと。 - ルックの幅が選べることや、表現方法を色々と検討できることこそが、3DCGの醍醐味なわけです。僕としてはそこが一番面白いと感じるところでもあり、チャレンジしがいのあるところだと感じています。
-
※2※2
-
※2※2
- ー 具体的に3DCGでしかできない表現があれば教えてください。
- 分かりやすいところですと、背景のカメラワークですかね。制作のスタイルとして、キャラクターは3DCGで、背景はアニメのように2Dで描くこともあるんです。でも、僕としてはせっかくなら背景もできるだけ3DCGにしたいんですよ。そうすることでカメラワークが自由になり、人が作り出す撮影の臨場感が再現できるので、実写的な見せ方が可能になるんです。
制作現場
だからこそ生きる
DAIVの可能性
- ー DAIV(デスクトップPC)を使用しての所感はいかがでしたか?
- 松本:自分が面白いと感じたのは、筐体の設計ですね。筐体の後ろ側にキャスターがついているおかげで、気軽に動かすことができます。制作現場ではPCを移動させないといけない場面が多いので、とても便利に感じました。SOLA DIGITAL ARTS内のチーム編成に応じて起こる、移動やセッティングの際もとても楽です。プロジェクションマッピングやスタジオライブの現場などでも、使い勝手がいいのではないでしょうか。
- 使用したDAIVは
GPUがGeForceモデルでしたが、3DCG制作の現場としても、今はGPUが主流になってきている変化があると思います。昔はQuadroでないと仕事が進まず、かつGeForceはゲームがメインというイメージだったのですが、進歩が早かったり安かったりと利点が多くて。使用するソフトもGeForceに対応してきている点が大きいです。
GPU
「Graphics Processing Unit」の略で、3Dグラフィックスを描画する際に必要な計算処理を行う半導体チップのこと。PCの映像データをディスプレイに出力する役割を持つ重要な役割を果たす。
- もっと全体を見ると、3DCG制作では一般の人が使っているPCとプロが使用している
ワークステーションとで、性能の違いがなくなりつつあります。
ワークステーション
組版、科学技術計算、CAD、グラフィックデザイン、事務処理などに特化した業務用の高性能なコンピューターの総称。
10年前であれば数時間かかっていたレンダリングも、数十秒で完了するくらい圧倒的な進歩を遂げています。プロの作品が作れるレベルまで、PCの性能が上がってきたおかげです。レンダリング
編集した3DCGのデータや動画のデータをPC上で書き出すこと。
機材の進化を追い越すように、
やりたいことが増えていく
- ー 機材環境の変化は、制作現場の改善につながっていますか?
- 荒牧:PC性能の向上は大きくあるのですが、それ以上にやることが増えてもいるので、いたちごっこではありますね。例えば演出の幅の話をすると、ただリアルにするだけではなく、服の動きひとつでも感情に合わせて動かしたいんですよ。そうやって要求レベルを上げるほど、大変なことになってくる。
- 技術革新はほしいので
リアルタイムレンダリングも話には挙がるんですが、変化には予想がつかない分、事故もつきものですので。今ある技術や機材をどう変えるか、のバランスは難しいところがあります。
リアルタイムレンダリング
リアルタイムに画像の解析や生成ができる、コンピューターグラフィックス分野の技術のひとつ。
- ー 3DCGならではの、制作の特徴があれば教えてください。
- 一般的にゲームの3DCGは、コンピューターで生成したものを画面に出して、リアルタイムで見ています。3DCGのアニメ映画も見えとしては近いですが、作り方は全く違いまして。人間のモデル、アニメーション、表情、質感、背景、全部を別々に作るんです。そして最終的に
コンポジット、
コンポジット
3DCG、2Dの作画、実写映像などの各種素材を合成する工程のこと。
レンダリングを経てやっと絵になっていくので、最後の最後まで、各工程の関係性が見られないんですよ。レンダリング
3次元空間の物体を2次元の画像にすること、または合成の作業で完成したものを最終的な映像に出力することを指す。
だからこそ、先回りして最終的な絵を想像しながら進めないといけないことが、すごく大変ではあります。
- ー 今後の制作において、機材の観点で望むものはありますか?
- ソフトの壁を感じることなく、直感的な調整が最終画面上で可能になる機材やソフトが登場すると、楽しいだろうなと思っています。
例えば完成したキャラクターの髪の長さを変えたいときに、最終画面から髪だけを選択して調整ができればいいなと。今ですとコンポジットの画面の調整なので、その前にある3DCGのソフトに移り、さらに髪を扱うプラグインのソフトに戻らないといけません。そこまで工程をさかのぼると全部やり直しになってしまうので、無理だと諦めざるを得ないんです。
- ー 表現方法にまつわるエピソードがあれば教えてください。
- 自分たちのやりたい表現は、時間と手間さえかければできるようになっています。だからこそ、3DCGを使って「人がどう動くのか?」を考えなければいけません。
以前ゲームムービーの制作工程で、「主人公の目だけを動かしたい」という話が最終納品前に出たんです。3DCGだと今さら調整はできないので、結局自分が目の部分を全て手で描くことで解決したんですね。つまるところ、結果がよければ過程は何でもよくて。全部PCに任せるのもよいですが、+αとして人間の柔軟な思考は大切にしたいです。
これからの
未来と、
シンギュラリティ
- ー コンピューターの進化とともに、制作側の革新も感じましたか?
- 荒牧:95年位ですかね。3DCGはメカや固いものの表現に特化していると思われていた中、3DCGでキャラクターを作る機会があって。
- キャラクターはさすがに無理だと思っていたのですが、データを触って自分たちで映像を作ったときに、「これはいけるな」と。モーションキャプチャーも同じタイミングで初めて行ったこともあり、「これなら全編3DCGで映画も作れる」という大きな手応えは感じましたね。『アップルシード』もスケジュール的に厳しかったのですが、やってみたら結果的に一年半くらいでできたのかな。技術革新と、心意気もありますが、自分の中の3DCGに対する価値観が変わりました。
-
※1
-
※1
- ー PCであるからこそ、どんなことができると思いますか?
- 今はある程度の動画ならスマホで作れる時代になりましたが、0からモノを作ることはPCでしかできないと思います。以前と比べたら機材やソフトの価格も安くなっているので、PC一つあれば、一人で0から映像が作れるわけで。プロが使っている制作環境が手の届く金額で手に入れられるのは、非常に大きな変化です。「センスと努力さえあればプロに並ぶような作品が作れる」、昔からアニメーションをしてきた自分にとっては、夢のような環境だと感じます。
- ー荒牧さんの考える「シンギュラリティ」を教えてください。
-
シンギュラリティ、コンピューターが人間よりも高次元なことを考えてくれる時代は、ある意味でとても理想的だと思います。今でも自分の情報がハックされ流出することを怖れる反面、Googleがなければ明日から仕事もできないくらい、頼りきりな状況があるわけですしね。
シンギュラリティ
技術的特異点。人工知能(AI)の学習深度が特異点を超え、人間の知能を上回るとする考え。2045年起こると予測されている。
コンピューターがなければ今の生活が実現できない状況の中で、「どう生きていくのか?」という話です。そういった意味では、シンギュラリティもコンピューターとの共存を考える第2段階に来ているのではないでしょうか。自分としては、それまでに滅びないよう、特異点の向こう側をぜひ見届けたいですね。
制作現場の最前線で
活躍するハイエンドPC
OS : Windows 10 Home 64ビット / CPU:インテル® Core™ i9-10900K / メモリ : 64GB PC4-21300 / M.2 SSD : 512GB NVMe対応/
グラフィックス : GeForce® RTX 2080 Ti / 拡張カード:Thunderbolt™ / 電源 : 800W【80PLUSR TITANIUM】
※代表的な構成の一例です。
※当ページの掲載内容および価格は、在庫などの都合により予告なく変更、または終了となる場合があります。
※該当機種が販売終了している場合、後継モデルへのご案内になります。
※1 : ©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
※2 : ©TSUBURAYA PRODUCTIONS ©Eiichi Shimizu,TomohiroShimoguchi ©ULTRAMAN製作委員会Shimoguchi ©ULTRAMAN製作委員会